研究推進と社会実装をつなぐコーディネーション実践:礒崎が語る課題解決の現場(社員インタビュー)
はじめに
本記事は、弊社noteへ2024年10月に掲載されたインタビュー記事を、より多くの方にご覧いただけるよう、当社公式テックブログにも転載したものです。内容は掲載当時のものとなります。
(※記事中の組織名・役職等はすべて取材時のものです。)
本文
ーー第1回目のCTO,中村さんのインタビューに続きまして、今回はPI(プリンシパル インベスティゲーター)の礒崎さんへインタビューをさせて頂きます!礒崎さん、よろしくお願いいたします。
早速なのですが、digzymeご入社の経緯を教えていただきたいです!学生時代は、東工大から京都大学の博士課程に進まれたんですよね。その後、digzymeに入社されたとか。
はい。京都大学の博士課程を中退したのですが、その後東京に帰ったタイミングで、東工大で1つ上の先輩だった渡来さん(※digzyme代表取締役CEO、渡来直生)がdigzymeを発足させていて。『面白そう』だったので声をかけたことがきっかけです。
ーーそうだったんですね。東工大時代、お二人はどういうご関係だったのですか?
そもそも渡来さんと知り合ったのは、東工大時代のiGEM(※The International Genetically Engineered Machine Competition)で・・・
ーーiGEM!digzymeも協賛していますよね。
はい。iGEMは、まだ学部生でも研究室に入らず擬似的に研究活動がちゃんとできる、世界最大規模の合成生物学コンペティションです。
そのiGEMで、渡来さんとは東工大代表として同じチームだったんですね。3人1組のチームと少人数だったこともあり、当時から結構仲が良かったんです。
ーー3人1組だとかなりの時間を一緒に過ごすことになりそうですね。
ですね・・・というようなこともあり、渡来さんがすごいというのは当時から知っていたんで(笑)
ーー『すごい』ですか、、、なるほど(笑)
もう、iGEMの時からキレッキレだったんで(笑)時を経て、この人が会社をやるんだ・・・!これは面白いことになるぞ、と。
ーーあ、『「面白そう」だったので声をかけた』の面白さって、そこですか?(笑)
そう・・・あの渡来さんがCEOである・・・というところですね。
そもそも僕は、学生自体に専攻していた分野的に、当時は酵素についてそこまで詳しくなかったので。
東京に帰ってからしばらくは他の会社で技術営業みたいなことにも携わっていたのですが、少しの兼業期間を経て、その後digzymeにフルコミットする形になりました。
ーー他社様で、技術営業もされていたんですね!digzymeへフルコミットするに至った決め手は何だったのでしょうか?
技術営業のお仕事では、取り扱っているプラットフォームの説明をお客様にして、いったん社内に持ち帰って、対応する技術員に渡す、という立ち位置だったんですね。
それ自体は大切なお仕事ですし、むしろdigzymeでも今、人材が欲しいポジションでもありますが。ただ、ほとんどお客さんとのネゴシエーションがメインで、新しい技術的なことに直接携わることが少なくて。僕としてはちょっと、橋渡し役的なところに無力感を感じてしまっていたんです。
技術営業ってこういうことなんだ、というのが体感的に理解できたのはとてもいい経験だったのですが。
研究者のクリエイティビティって、自分で課題を設定して勝手に自分でゴールに向かって走っていくところにあると思うので、digzymeではそれができると思ってフルコミットに至りましたし、実際に今、そのようにできているのが嬉しいです。日々の課題に取り組むことに、すごく達成感を感じております。
ーーなるほど。礒崎さんの望む方向に進まれていて、聞いていて私も嬉しく感じました!具体的には、どんなことに特にやりがいを感じますか?
共同研究や新規事業の課題を解決するための解析技術を日々作っておりますが、そのなかで生物学的な特徴をドライの解析にいかにうまく落とし込めるかということを話し合い、それを現場で試せるところですね。
ーー生物学的な特徴を、DRYの解析に落とし込むってどういうことなんでしょうか?
そうですね。具体的にいうと、お客様から頂く『抽象的な課題』をめちゃくちゃ細かく『生物学的にはこういう特徴のはず!』とDRYで検証していって、最終的にはWETに繋げていく・・・これを“落とし込んでいる”と表現しています。
手順でいうと、まずは、生物学的な特徴のどの側面が、解決したい課題に寄与しそうか?というところを、DRYの要件として落とし込んで解析していきます。
構造上的な形の差は?一時配列上のモチーフのパターンはどう違うか?生物種的に発現させることができるかどうか?などについて『仮説を出して、解析する』ということをDRYでは行いますが、それだけで終わらず、ラボでWET検証したり、共同研究の場合は先方様に実際に試して頂いたり。
共同研究、自社研究ともに仮説検証がフルセットでできる・・・つまり、頑張って考えた仮説を実証できるんですね。これが、僕にとっての大きなやりがいです。
ーー詳しくありがとうございます。
中村さん(※取締役CTO、中村 祐哉さん)のインタビュー時もでしたが、礒崎さんとお話ししていてもdigzymeはDRYとWETがシームレスに結びついていることをひしひしと感じますね。
そうですね。digzymeはDRYとWETという二つの基盤がしっかりあるので、非常に良い環境です。
ーーさて。礒崎さんは、DRY、WET、両方に精通していらっしゃいますが・・・日々の業務で、これまでのご経験が役に立っていると感じる場面はありますか?
それでいうと実は、DRYに関しての経験って、学生時代はユーザーとして、市販の解析ツールをちょっとだけ使える、くらいだったんですよね。コードを書いたりはできなくて・・・
ーーえ!信じられないです・・・!
そうだったんですよ。
しかも、どういう理屈でDRYのツールが作られているのかも知らないで、ほんとに『使えるだけ』って感じでした。なので当時は『DRYの人』とは呼べないですかね(笑)そもそもWETの人間でしたし。
博士課程では沖合に出て、海のバクテリアを調べてたりしていたんで。あくまでメインはWETで、補助的にLinuxをちょっと使う、というくらいでした。
ーー沖合・・・?海のバクテリア・・・?という気になる単語も出てきたんですが・・・。
ええと、当時はDRYのツールは、どんなことに使っていたんですか?
RNA-Seq(※次世代シーケンス(NGS)解析のひとつで、「トランスクリプトーム」と呼ばれる遺伝子発現を網羅的に検出する次世代シークエンサー)などを用いて、海のウイルスの感染対象をゲノム側の遺伝子から推定することなどに使っていました。
ーーなるほど。修士課程まではいかがでしたか?
修士まではLinuxも知らなかったですし、パソコンもwindowsだけで、エクセルくらいしか開いたことないような状態でした(笑)
というか、その頃はもっと遠くて、ゲノムすら扱っておらず。
修士ではマウスを使った癌のモデルなどの研究をしていたので、マウスに癌細胞を移植しては、そのサンプルをとって・・・職人技みたいな感じで、腫瘍の切片を作成して・・・顕微鏡で観察して・・・
みたいなことをやっていました。
イメージとしては、病理医の方が人間になさることにちょっと近いかもしれないです。
ーー今お仕事でなされていることとは、だいぶ違いますね。そして、確かに一切パソコンが登場していません・・・。
そうなんです。ただ、流石に学会などに足を運ぶなかで、DRYが全くできないと、アカデミアにせよ他の研究職に就くにせよ、生きていけないな〜と実感しまして。
ーーそういうものなんですか?
うーん、その感覚はWETを専門にやっている皆、ある程度持っている気がしますね。
「可能ならやっぱり勉強しておきたいな」
みたいなことは、今のdigzymeのメンバーも大半が口にすることだと思います。
ーーDRY、WET、両者を理解できているとメリットも色々ありそうです。
はい。でも何していいかよくわからなくてペンディング、みたいになりがちなんですが。
なので、僕も修士から博士に進む過程で、あえてラボを変えた意図はその辺にありました。
一応WETもDRYも両方できるであろうラボに移ったわけですね。とはいえ、先ほど申し上げましたように、市販のツールを使う程度だったので、digzymeに入社するまではコードを書くという意味ではpythonも触ったことがない状態でした。
なので、digyzmeに入ってから全部、渡来さん、中村さんに教わったんですよね。当時、某ファミレスで(笑)プログラミングを教わる会というのをたまに開いてもらって、宿題を出してもらい、ちょっとずつ上達する、みたいな。
ーーそうだったんですね。ちなみに、WETの経験があるからこそ、DRYの開発に活きてくる部分もあるんでしょうか。
そうですね。WETの人たちがDRYのツールを使うときの気持ちがわかる、という部分はかなり大きい気がします。せっかくなので、関連して、そもそもWETでやっていることをDRYでやる、ってどういうことなのか?ということも説明しましょうか。
まず、WETの「実験」部分をDRYで行うのは無論無理です。
DRYで行えるのは、それ以外のいわゆる調査の部分。例えば、digzymeだと『酵素の探索』がまさにそれなんですけれど、『今回のお題で、何の配列を出したらいいか?』っていうのは、本来は『研究職』という大きい枠の中の人の、作業のひとつです。
ですが、digzymeはDRYとWETという二つの基盤があるので、この『酵素の探索』はDRYの人が担当しています。どうやったら良い配列が取れそうか?という曖昧な内容も、DRYで自動化してサクッと判断できるようにしておくと、そのあとすぐWETで実験できますし、また、実験の数も減らせるというようなメリットが沢山あります。
『酵素の改変』も同じですね。『ここを改変したらいいよね』っていうのがDRYですぐわかる。でも本来は、これら全てが大きな枠での『研究職の人』の仕事なわけです。なので、WETの経験があれば自ずとDRYの開発にも活きてきます。
ーーなるほど!理解できました。ありがとうございます。
話は少し戻りますが、博士課程でなされていた、海のウイルスの研究についてお聞きしてもいいでしょうか?
海に関わらず、変なところにいるウイルスの研究がしたかったんです。そのなかで、先ほども申し上げました通りDRYもできそうな研究室を選んだら海洋分子微生物学研究室という選択になりました。
ーー『海の』ウイルスという部分にはそこまでこだわりがなかったということですね。
変なところにいるウイルスの研究がしたい!と思われたキッカケって何だったのでしょうか?
そうですね(笑)その理由を説明しようとすると、小学生の頃にまで遡るんですが・・・
当時ちょっとだけ話題になった『the FUTURE is WILD』(※人類滅亡後に、どんな生物が地球上で栄えるのかシミュレートした話題の書。象と見違えんばかりの巨大イカなど出てくる生物のCGも魅力的。/ドゥーガル・ディクソン (著), ジョン・アダムス (著), 松井 孝典 (著), 土屋 晶子 (著))という本がありまして。
そのなかで未来の生物が想定して描かれていたりして・・・また、逆に、古生物の本が好きだったり・・・生物の進化上、古生物を追っていくとどんどん小さくなるんですけど・・・最初、微生物からスタートして大きくなってく・・・その過程が、我々が生きている今の状況と全く違うので、単純にモンスターチックで面白いなと(笑)
なので『極限環境微生物』みたいな分野があるのでそれでもよかったんですけど、それよりもう一歩捻った感じのものが好きになってしまいまして。
例えば、ウイルスが哺乳類を作ったかもしれないという説があったりするんですが。
胎盤を作る部分の遺伝子が、レトロウイルスというウイルスで構成されていたりするんですけど、実はそれが急に生まれた原因はウイルス進化説に基づいている・・・とか。そのなかでも、特に変わったウイルスを扱うのは面白そうだなということが進路選択のキッカケになりましたね。
ーーウイルスって何者なのかは私も気になります。かなり奥深いんですね。さて、話題は変わるのですが、これまでに、仕事で苦労されたことがあれば教えてください。
お客様からの抽象的な課題を「事業的に有益、かつ、実現可能な解析手段」に落とし込むことですね。お客様にとって
『digzymeにどれくらいの粒度で依頼をしたらいいのかわからない』もしくは『そもそも粒度を細かくできない』というときに、課題が抽象的であることがしばしばあります。
例えば、『具体的な化合物の構造すらなくて、なんとなくこんな感じの性質を持ったものが欲しい』『なんとなく今作っているこの生産品の生産量が上がると嬉しい、酵素が使えるか使えないかわからないけど・・・』などのオーダー。
これらを実現する際、従来の手法や競合他社と、digzymeならではの技術を比較し、本質的に勝る部分があるかはもちろん、市場とマッチするかなども含めて多角的な視点で考え、最終的な解析手段に落とし込むことは毎回それなりに苦労しますね。
ーーなるほど。いつも、どのように乗り越えられていらっしゃいますか?
早めに社内外の適切な人材に相談することで解決しています。
また、今は事業部のメンバーが増えたので、僕が初回の面談から参加することも少なくなってきていて、上記のような抽象的なオーダーに僕自身が直面する機会は減っています。
会社の仕組みとして、抽象的なお題を具体化していくレイヤーがどんどん整ってきていていて有難いです。
ーーメンバーが増えることで、課題を解決しやすい環境がどんどん整っていっていますよね。
ところで『社内外の適切な人材に相談』といえば、礒崎さんは社内でかなり積極的にコミュニケーションを取られているイメージです。私もいつも助けられておりますが、社外でも?
そうですね。新規事業のお話でも、ビザスクなどで有識者の方にヒアリングをよくします。
特に食品事業部関連の内容だと、宮内さん(※取締役CSMO、宮内 琢夫さん)経由で有識者の方々を募って、ご意見を伺うことも。
ーー心強いですね。ヒアリングした内容で、心に残っているものはありますか?
沢山ありますが、一例として・・・
とある酵素(試験に使うような)の活性をすごくあげられるとしたら、それが事業になり得るかどうか?というお話をお聞きした際も、
「その酵素の活性は今まで一定以上上がったことがなくて、もちろん上がれば上がっただけ試験の精度が上がるので良いが・・・そんな例は技術上いままで見たことがない」
というお言葉をいただけました。
ーー「そんな例はみたことがない!」これは嬉しいですね!
はい。自信を持って、
「これは市場に深く刺さるなぁ」
ということを判断することができました。
ーー素敵な事例を教えていただきありがとうございます。
続いてのご質問なのですが、仕事をする上で大切にしていることはありますか?
これも、社内外問わずまめにコミュニケーションをとること、ですね。
そのためにも日頃から、問題が生じたときに早めの相談がしやすい関係性を築くことを大切にしています。
心理的障壁が下がっていると、悪い関係にはなりづらいですし『壁がある』と相手に明示しないことに気を配っていますね。
壁があることで、敵/味方、という2サイドが生まれてしまうので。ニュートラル以上であれば敵になることはないですし、問題が発生しづらくなるなと思っています。
ーー感慨深いです。そんな礒崎さんですが、今後どのようなことに取り組んでいきたい(チャレンジしたい)ですか?

まさに今取り組んでいることですが、wet研究業務全体の管理です。
過去はCTOの中村の下に社員がフラットに存在している、という状態でしたが、今年からは僕と高山さん(※PI=プリンシパルインベスティゲーター、高山 裕生さん)が全WETメンバーのひとつ上のPIというレイヤーとして入って、その下にPM(プロジェクトマネージャー)、DRYメンバーは中村直下という組織図になりました。
WETの皆の研究業務を直接管理することが今までなかったので、不慣れで少し苦労していますが、同じPIの高山さんにも助けてもらいつつ進めています。
今後のdigzymeに対して期待したいことは、さらにPM層が厚くなることです。なるべく、ある程度上流(DRY)のことがわかるWETメンバーを増やしていきたいですね。
ーー次回インタビュー予定の彦有さん(※インフォマティクススペシャリスト、鈴木彦有さん)も、先日少しお話しをした際に、同じことをおっしゃっていました。
とはいえ、いきなりDRYのことを学ぼうと思っても具体的に何を学んだらいいのかピンとこないと思うので、そこはOJTを通して伝えていけたらと思います。
もちろんWETメンバー全体に対してアプローチしていくよう心がけておりますが、早期に動き出しているという意味では、今は僕が根岸さん(※シニアアソシエイト、根岸 孝至さん)高山さんが崎濱さん(※シニアアソシエイト、崎濱由梨さん)にDRYのことを色々と伝授しております。
ーーなるほど。DRY解析ができるWETメンバーが順調に増えたら、さらに強い組織になりますね。他には何か挑戦したいことはありますか?
『三次元構造を活用した酵素ファミリー』の特徴を反映した解析パイプラインの構築を促していきたいです。
これによって、酵素業界全体でいままで埋まっていない需要や、これまで試されていなかった新規のアプローチに繋がるはずなので、酵素を基盤としたものづくり全般の多様化、生産性の向上が見込めます。ということで、田村さん(※インフォマティクススペシャリスト、田村康一さん)と一緒に進めていけたらなぁ、と。
digzymeの強みは、上流も下流もできて、さらに生産まで行えるように準備しているところにあります。『AIでちょっとした解析をしてくれるところ』というニュアンスとは根本的に違うので・・・
ーー強みを強みたらしめる動きになりそうですね。
はい。やっぱりdigzymeは、マーケットインが意識できているディープテックだというところが最大の特徴なのかなって。特に役員人はみんな、当然のようにスケーリングを意識しています。
ーーもちろん、細かい技術に関して他と差別化できているのは、
各分野のプロフェッショナルが集まっているからというところにありますが・・・ーー技術上、今できるかは一旦置いておいて、こういうことをすると大きくビジネスが飛躍していくでしょうというところにものすごくアンテナを貼っています。だからこそ、必要な技術が定義できて、定義した技術を確実に作れるという好循環があるんです。
ともすると、ディープテックの企業はスケーリングが目的ではない場合もあるんですよ。
でも僕らの考えは、『ある程度、稼げればいい』『この技術はすごいからどうせ引くてあまたでしょう』などのようなふわっとしたイメージじゃ駄目だということ。
いくら凄くても、使いたくない用途のものだったら『確かに革新的だけどな・・・』で止まってしまうこともよくあるそうですから。
ーーマーケットイン思考があるから、お客様の心を動かせるのかもしれませんね。
そうです。そのためにも渡来さんを筆頭に、スケーリングを意識してビジネスの最先端のところを調査し、それをちゃんと技術的な言葉に変換できる人がいることがすごく重要です。
ーー最後に、digzymeに応募を考えている未来の仲間に一言あれば、お願いします。
人間性も、研究やこれまでの業務のバックグラウンドも、多種多様な人材が揃っていて、研究だけにとどまらない様々な分野の経験をできるので、新しいことにどんどんチャレンジしたい方、歓迎です!
ーー礒崎さん、ありがとうございました。
終わりに
▼オリジナル記事はこちら(note)
https://note.com/digzyme/n/n4cb24197110b